「小倉城 竹あかり」の竹灯籠をリサイクル 竹を原料にした国内初のお香「小倉竹の香」を販売 その3

まるで竹林の中に佇んでいるかのような香り

竹をお香として成形する見通しが立つと、次は香りです。自ら香り袋の調合もする野上さんの竹らしい香り探しが始まりました。
「竹って、ちょっと青臭いような独特な香りがしますよね。そのみずみずしさや清々しさを出したいけど、粉末状にすると途端に香りが弱くなってしまうんです。さまざまな香料を調合しながら100種類ぐらいのサンプルを作りました。最後に残った3つの候補の中から、ようやく納得のいく香りができあがりました。例えるなら、竹林の中にいるような、清々しい香りです」

さわさわと竹の葉が風に揺れる中に佇んでいるような竹の香のやさしい香りは、リラックス効果も抜群。お仏壇へのお供えだけでなく、お部屋のフレグランスとして焚くのにもぴったりです。
北九州を代表するようなお土産に
成形加工に1年、香りづくりに1年を費やし、最後に取り組んだのは容器製造。とことん竹にこだわる野上さんは、竹筒にお香を入れたいと考えました。
「最初は竹筒にお香を入ればいいと簡単に考えていましたが、容器の竹の水分でお香が湿気てグニョグニョに…。竹筒を使うのはムリかも、と一時は諦めかけましたが、しっかり竹筒を乾燥させニスを塗って加工すればいいと教えてもらい、それからさらに1年かけて何度も試作を重ねました」と野上さん。


最終的にできあがった容器には、竹林整備で切り出され、これまでは焼却処分されていた真竹を再利用することに。これもまたSDGsに貢献していると言えます。
自ら竹をカットし、ニス塗りまで行っているという野上さんは、「商店街の店主はやっぱり職人なんですよ」と笑います。
今後は商店街の中で市民にも竹筒の加工を体験してもらう工房をつくるべく、準備を進めています。
「この取り組みで北九州の竹の価値をつなげたい。そして僕のやったことが商店街の成功例になることで、後に続く人が新しいことを始めるきっかけになりたい。だから竹の香をつくり販売するというこのチャレンジは、リスクではなく可能性だということを見せたいと思いっています」
魚町銀天街は、日本で初めて公道にアーケードをかけ、また、いち早くSDGsに取り組むなど、元々先進的な気質を持つ商店街です。野上さんはさらに新しい方向に進めるようなレールを敷き、新しい商品をブランド化することで、商店街の存続や、さらには小倉の街の進化につなげていきたいと考えているそうです。

「北九州で生まれた『竹の香』が、北九州の魅力を伝えるもののひとつとして地元で認知され、その背景と共に全国に広がっていくことを目指しています」
小倉を代表する大きなイベントから派生し、リサイクルやSDGsという循環を五感で体感できることを目指した「小倉 竹の香」はこれからも進化を続けていくと言います。
創業大正8年の老舗神仏具店を担う、野上さんの挑戦はこれからもつづいていきます。
取材/文 岩井紀子